BACK 朝のケネディーパーク

  食事をしながらテ−ブルの上に地図を開けた。先ほどの、東出入り口の表通りは、ウイリアムズ通で最も賑やかなメインストリートのようだ。今日は、ウイリアムズ通りからまっすぐコリブ川の河口まで行き、そこで折返すことにした。地図上での距離は片道1kmもない。帰りは海側のマ−チャント通りから、ケネデ−パ−クに戻ってくることにした。アイルランド第三の都市ゴ−ルウエイの街は、ネデイ−パ−クを中心に半径1km以内にあるようだ。最後に駅の北側にあるゴ−ルウエイ・インフォメ−ションセンタ−( i )に寄って、2〜3日間のB&Bを予約しなければならない。地図を片手に東出口から、昼過ぎのウイリアムズ通りに出た。授業が終わったのか大学生らしい男女の数が多くなった。この街には、ユニバ−シテ−カレッジなど2〜3大学がある。京都と同様に「学生の町」と言える。旅行シ−ズンは「終わり」に近いのだろうか、旅行者が多いと思えない。街は女性が男性より遥かに多い。今頃、男達は牧場や畑で働いているのだろうか。若い女性は栗色の髪が多く、男達は「二枚目のやさ男」が少なく、「田舎の兄ちゃん」という感じがする。しかし、彼らの服装は清潔でキッチリしている。「どこかの国」のように、靴のかかとを踏んで「ダラダラ」と歩く若者はおらず、清潔で元気で明るい。

 ウイリアムズ通りは、古い石畳の歩道と車道が緩やかにカ−ブをしながらコリブ川の方に延びている。通りの雰囲気は、ダブリンの明るく賑やかなクラフトン通りに似ている。通りの両側には、3階建てのこじんまりしたブリック建築の店が仲良く肩を並べている。ここでも、同じ高さのビルが一列に整然と肩を並べている。「我こそは、一番だ(高い)」なんてビルはない。その為に、空には凹凸のない均整のとれた町並みが気分を和らげてくれる。通りはケネデ−パ−クから来ている。正面前方に花屋と宝石店が見えている。レストランやバ−もあるが、間口の狭い小さい店が多い。大きい店は電気店、マクドナルド、宝石店、本屋ぐらいである。 どこを歩いても空が見える。暑くも寒くもないいい気分だ。古い石畳とブリック建築、綺麗なショ−ウインド−と芸術的なカンバン、栗色の髪の中を人の流れに沿って歩いた。陶器や美術工芸品の店も多く、アイリッシュ陶器やレ−ス編みが目を引く。ダブリンのジョージアンズドア−に取り付けられていた、あの真鍮製のライオンの顔をしたノッカ−が売られている。ライオンの鼻に、大きな真鍮製のリング(ノッカー)が通されている。直径20cm以上で、重くて片手では易々とは持ちづらい。

 どの店も大きなショ−ウインドウを持っている。ドア−、窓枠、カンバンは木を材料としたものが多い。木の暖かさと、ブリックの持つ冷たさの相反する性格が調和している。ダブリン同様に一軒、一軒違った色のブリックとドア−がある。特に小さい店は個性的で、ドアーの幅は1m程の片開き式が多く自動ドアーは稀である。セーター屋さんとパン屋さんがある。この辺りは特に人通りが多く賑やかだ。しかし、車はめった通らない歩行者天国と同じである。セーター屋さんの前に来た。PULL OVERのショーウインドーの中に、複雑な模様で編まれた「アランセーター」が陳列されている。古い昔から、アラン島では漁に出る漁師の恋人や妻が、安全を祈り(遺体の判別の為とも?)、一枚一枚に、違った編目模様を入れた有名なセーターである。パン屋さんの1階は、白いレンガ造りの壁で出来ている。入り口のドアーは緑色の木枠にガラス窓が入っている。2階は、1階とは対象的に城壁のような石造りの壁になっている。カンバンの一つは2階の窓際に吊られている。50cm平方位の大きさで、形は日本の屋根瓦によく似ている。

 下地が緑色のボードに、金色のデザインされたブロック体で、GRIFFIN‘Sと店名が描かれている。その下に、コッペパンのような白い帽子をかぶり白いエプロンを身につけた、作業服姿のパン職人が、焼き立てのコッペパンの入った大きなトレーを抱えて走っている。その下に、BAKERY1876年創立と書かれている。ドアーは開けたままで、若い女性客がパンを買っている。 純白の壁と柱の上に、ワインレッド色の肉厚の大文字で、GENTS SALONと書かれている店がある。入り口のドアーも白色で、白と赤のコントラストが鮮やかである。白いドレスシャツで黒いズボン姿のスマートな男性が、お客の髪をカットしている。その様子が、広いガラス窓を通して見えている。ダブリン同様、個性あるお店のカンバンが目を楽しませてくれる。 ウイリアムズ通りを北のコリブ川に向かった。車道幅は6m程の北行き一方通行で、残念だが石でなく「セメント」の道である。車道の両側に古い石畳の歩道がついている。車が一台歩道にぴったり寄せ駐車している。その駐車している車の間を車と人が通る。車はゆっくり走り人は気ままに歩いている。ここでも、「駐車違反」を取り締まる警官の姿はない。街は、ジーパンや綿パン姿の若者が多い。ほとんど長袖を着ているが、半袖・Tシャツ姿もある。