発車15分前、駅員がプラットホームの入り口にある看板を「乗車可」とした。並んでいた乗客たちがチケットを手に持ちぞろぞろと入って行った。ベルファースト行き急行と他に5両編成の古いジーゼル車が止まっている。車両は禁煙車と喫煙車に分かれていル。外は少々汚れているが中は綺麗だ。出発時には満席になった。汽笛とともに工場のようなコノリー駅を出発した。外は小雨混じりの霧の世界で暗い。窓から近くの高い近代的ビルがぼんやりと見えていた。しかし、2〜3分すると畑や小高い丘陵地の世界に変わった。これが首都ダブリンの東北側の中心地なのである。10分もすれば田園地帯になり20分で羊や牛の放牧地になる人の姿はない。右手に広い干潟が延々と続くその向こうは海であろう。小雨交じりの霧が干潟の上に立ちこめ50m先は見えない。晴れてきた。線路の右側に海が広がる穏やかで青く綺麗だ。砂浜の海岸にも人影はない。沖合いに漁船も輸送船の姿もなく海だけである。列車は時々、無人の駅を通過する。隣席の2人連れ中年婦人がテーブルの上のスナックをつまみながら世間話をしている。
最初の急行停車駅ドロヘダに着いた。明るい琥珀色の石造りで広いガラス窓の新しい綺麗な駅だ。停車時間は2〜3分乗降客は少ない。ダンダルク、ニュウリイ駅を過ぎるとベルファーストに近づく
。どの駅も駅前にタクシー乗り場や商店はなく、バス停や広場、駐車場があるだけだ。駅から離れたところにわずかな住宅が点在している。北アイルランド(イギリス)に近づくにつれ舗装された広い道が多くなる。大型トラックの姿も時々見かける。「ベルファーストへと書かれた標識」が見える。ポータダウンが近い。高低のある緑の丘陵が多く列車は、アップ、ダウンを繰り返し進んでいる。軌道から50mほど向こうに小川が流れている。石の小橋の上で3人の子供が列車に向かって手を振っている。日本の古き時代のローカル線での光景である。工場や高いビルが見えポータダウンに着いた。駅前の駐車場にトヨタの車が見える。建物も密集していてかなり大きな町だ。国道はけっこう車が走っている。道路際に中型のスーパーがある。商店街の入り口に「一本の貧弱」なユニオンジヤックの旗が立っている。旗は威厳が無く似合わない。遥か向こうに「高層ビルが点在」している
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