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                     鉄道駅 デリー
 
小さな平屋の古い石造りの駅だ。20分前から切符の発売開始、ベルファーストまでの切符を買った。待合所はベンチが数個あるだけで、派手なポスターはない。改札は「手動」で、「駅長」さんが掃除をしている。彼は「おはよう」とにっこり挨拶して再び掃除を開始した。ハイキングでも行くのか、リュックサック姿の中年のカップルが来た。さらに半袖のポロシャツ姿の40歳ぐらいの親父と、中学生ぐらいの男の子が来た。親父の左うでに大きな刺青が見えている。子供は足が悪いようだ。親父は、「レスラー」のような体つきで、歩き方も大胆で目つきもよくない。その刺青は中心に毒蜘蛛が彫られて、回りに巣が張っている。日本なら完璧に「やくざ」である。切符売り場も窓口も1つ、改札も一箇所。自動販売機が1台あるだけだ。ポスターなどの派手なものはない。発車が近いようだ。駅長さんが、改札口に立ち乗車が始まった。
                 FOYLE川に沿って  Bellarena
 3両編成のディーゼル車が定刻に発車した。4割程度の乗車率だ。Foyle川の河口に向かっている。緑の畑の中を川に沿って汽車は走って行く。河口から右折れしてベルファーストに向かった。軌道から横の干潟まで手が届く感じ。河口付近は、黒い泥(自然)の干潟が広大で延々と続いている。貝取も誰もない。水辺には海鳥、水鳥が群れている。水溜りに足の長い鶴に似た鳥が一羽、棒のように突っ立っている。泥の上に鳥の足跡が点々と続いている。30分程でBellarenaに着いた。数人が乗ってきた。再び草原の広がる平地を走り始めた。左側の草原の向こうは干潟で、その向こうに海が見える。右側は畑が広がっていて、農家が点在している。「国道」なのか「農道」なのか、たまに、道路を車が走って行く。
                  
Castle rock
 はるか向こうに低い山並みが見えている。天気が不安定で、曇り始めるとすぐに雨に変わる。視界は霧とのため20m先は見えなくなった。時々、「ピーポアポー」と汽笛が鳴る。農道の踏み切りで、1台の乗用車が遮断機の向こうに停車している。しばらくすると、明るい「海色」をした海岸に出た。かなり高い波がある。一人の男が海岸をジョッキングしている。犬を連れた家族が浜辺を歩いている、珍しく人の姿を見た。眼下に黒い溶岩の岩場が広がっている。波が黒い岩場に打ち上げて、白い波しぶきをあげている。Castle rockの駅に着いた。発車後、男のアナウンスがされたが聞き取れない。「もごもご」と音が悪い。アナウンスは初めて聞いた。若い女性の車掌さんが、切符の点検に来た。乗り込んできた若者と何か立ち話を始めた、親しそうに話している。幼馴染かな、それとも彼かな?彼が席に着くと私の所にやって来た。ポチャとした、栗色の髪を後ろで結んだかわいい女性だ。鉄の飾りの着いた小さな木箱を、肩からぶら下げていた。検札しながら、「どこまで行かれるんですか」と聞いてきた、「ベルファースト迄」、「それじゃ、つぎの駅で前の車両に乗り換えてください。この車両は次の駅で切り離されます」と、彼女の笑顔が気持ちがいい。日本の若い女性からは見かけられない。座席は左側が2人、右側が3人掛けになっている。5両編成で80パーセントぐらいの乗車率だ。横に若い女性が座っていたが寝ている。窓の外は曇っている。この街は「中程度」の町で工場や住宅もある。広い川が見えている。外洋のヨットが3隻停泊している。ここから、海のほうに行くのだろう。その横に小さいがホテルが見える。

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