タクシ−は頻繁にくる。運転手は車を止めるとすぐに後部トランクを開けて車から降りて来た。彼は僕のトランクに気付いていたようだ。白髪交じりで赤ら顔をした小太りの元気そうな男だ。急いで荷物をトランクに入れ運転席に戻って来た。車は小型で無線機の装備はない。日本同様の右側通行だ。iの彼女が作ってくれた書類を手渡し行き先を伝えた。彼はその書類を目から離したり近づけたりしている老眼らしい。「わしはこの場所はわからん・・・」とブリブリ言いながら外に出て行った。そして、彼の後ろに入ってきたタクシーの運転手に道を聞き始めた。僕は車の後部ガラスを通して二人のやり取りを見ていた。
10軒ほどの住宅が点在している
彼の表情からすると、はっきりとは分からなかったようだ。「乗車拒否」かな?と思った。 しかしiの彼女は「必ず乗せてくれます」と言ったので心配はなかった。この空港で僕は彼と彼女、つまり天使と悪魔に同時に出会ったようだ。田舎の国道を30分ほど走った。所々に道の両側に10軒ほどの住宅が道路にきちんと平行して建っている。どの家も比較的新し平屋である。車は2階建ての白い洋館の前で止まった。塀の上に政府公認のシャムロックの看板が見えている。車は開けっ放しの大きな門をくぐり中庭に止まった。大きなゲストハウスである。料金メ−タ−は8ポンド80ペニ−であった。僕はチップを込めて10ポンド紙幣を彼に渡した。彼は「サンキュウ−」と言って立ち去った。彼の車を見送りながら「終わり良ければ全て良し」と、彼が僕に見せたギブアップのジェスチャア−を真似してしまった。
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