枕元の腕時計が6時半を過ぎていた。窓の外を覗くと雨は降っていないが曇っている。身支度を整え散歩する事にした。ドア−を開け外に出るとかなりの雨が降ったようで芝生がしっとり湿っている。白い鉄製の扉を開けて道路に出た。国道は静かなもので、たまに小型乗用車が通るだけ。小高い丘陵地で朝の涼しい新鮮な空気がいい。国道に沿って歩くと前に4〜5軒の住宅が見える。国道は田園地帯を左右と上下にカーブを描きながら延びている。住宅近くの交差点は珍しく信号機が付いている。広い道の奥に、100坪位の一階建て「洋館」が一列に20軒程並んでいる。新興住宅地のようだ。
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U大学講師に
撮ってもらった
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カメラをぶらさげ「きょろきょろ」しながら歩いた。煉瓦や石壁の古い住宅はない。庭に「青空ガレ−ジ」が付いている。塀が低いので一直線上の住宅の庭が全てが見通せる。前庭に緑の芝生と小さい白や赤の花が咲いている。写真を撮ろうとしていたら家から50才過ぎの「主人」が出てきた。驚いた僕を見て、相手もビックリして目をキョロとさせた。彼は私とほぼ同じ背丈で細身の紳士的な人だ。これから仕事なのかきっちりとブレザーを着ている。「一枚写真を撮ってほしいのですが」と言うと「いいですよ」と言った。その時中学生ぐらいの男子が二人僕らの方に歩いてきた。「おはようございます」と、彼にとても丁重な挨拶をした。彼もにこやかに挨拶を返した。学生達の挨拶はとても礼儀正くみえた。彼らが、日本と同様の「学生服」を着ていたのにも驚いた。僕は彼に礼を言って立ち去ろうとした。
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