BACK  朝のケネディーパーク

 ホテル前を右に曲がるとゴ−ルウエイ駅入り口だ。今日も長距離の定期バスが横ずけにされている。駅前にギネスビールのバーがある。今回は入る機会はない。「残念」だと「後悔」しながら駅に向かった。週末のせいだろうか待合所は混雑している。売店に新聞、サンドイチなどがある。壁際にヒューストン駅同様の長い木のベンチが有る。乗車待ちの人達が新聞を読んだりパンを食べている。奧の改札口で「往復チケット」を提示して構内に入った。プラットホームは東西に長く延びている。列車はそのまま東に走ればダブリン着く。しかし、駅の東側にはホテルやケネディパ−クがある。つまり、汽車は駅から東に向かうのではなく、一度西の海岸に向かって走りそこで大きく左回転し、先頭の機関車の頭が東に向ききると一路ダブリンへと向かう。すでに5両編成の古い汽車がホームに着いている。手入れの行き届いた汽車でダブリンから来た時と同じタイプだ。今日は構内全体が込み合っている。ホ−ムを東端から汽車の先頭である西に向かった。「最後の車両」迄でやって来た。そして、そのデッキから車内に入った。

 奥まで見渡すとまだ空席がある。乗客は若い人が多い。ダブリンやロンドンに行く(帰る)のだろうか。ヒューストンから来た時のような、「銀河鉄道」のメ−テルとの二人旅とはえらい違いである。一番最後の4人掛けシ−トだけが空いている。壁側に座った。「ここに、あと3人は座れる」と思っていると、前の座席に若いカップルが座わった。彼らはラフなスタイルをしていて週末をダブリンで遊ぶ様だ。汽車が動き始めた。僕の横だけが空席である。車両の後方をぼんやりと見ていた。リュックサックを担いだ小柄な女性が空席を求めながらやって来た。彼女の姿が近づくにつれて日本人だと思った。彼女は唯一の空席である僕の横の座席を見ながら、「この席は空いているんですか」と流暢な英語で聞いてきた。彼女が日本人だと確信を持っていたので、「どうぞ、あいていますよ」と言うと、彼女は「やはり日本の方でしたか、ほっとしました」とニッコリしてリュックを降ろして横に座った。ヨーロッパの西の最果ての街で、見知らぬどうしの日本人旅行者が、最後の列車の空席に同席するなんて、こんな奇跡は二度とないだろう。汽車は定刻通り2時過ぎに発車した。窓の外を見ると、線路脇の盛り土の上に雑草とススキが仲良く穂を揺らしている。少々寂しさを感じさせる。

 「頭の機関車」の方から、トンネル状のゴールウエイ駅を西に向けて抜け大きくUターンを開始した。すぐに海が見えてきた。「また来るよ。きっと・・・」と心の中で呟いた。頭を東に向けると列車は一気にスピードを上げた。彼女に「これからの予定は」と尋ねた。「ダブリンから船でリバプ−ルに渡ります。そしてスコットランドの知人宅に寄ります。数日後ロンドンから日本に帰ります」と話してくれた。華奢な体とは反対にしっかりした女性で、仕事や旅の思いでを話してくれた。「日本に帰ったらゆっくりお風呂に入りたい」と彼女、「醤油とわさびで刺身が食べたい」と僕、お互いに笑ってしまった。6時前にヒュ−ストン駅に着いた。彼女と駅から同じバスに乗り、オコンネル通りまで同乗した。僕は、コノリー駅から汽車に乗る彼女に別れを告げバスを降りた。彼女は「見送」る僕に、座席から手を振ってくれた。ダブリンを出てから久しくレフィ−川とオコンネルさんに再会した。川沿いのバス停から31番のバスに乗り込み空港に向かった。もう、すっかりなれたルートである。すぐにバスが来た。このバスに乗るとアンナさんの事を思い出す。アンナさんに電話をして、「一泊お願いしよう」と思った。しかし、空港の i で紹介して貰うことにした。