タクシ−乗り場は照明で明るい数人の客が待っていた。40歳ぐらいの穏やかな雰囲気の運転手だ。アン夫人がくれたB&Bの地図入り名刺を彼にみせた。彼は「直ぐわかる」とニコッとした。車は古い右ハンドルの質素な小型車だ。まだ夜9時なのに車は少ない。本当に一国の首都空港なのかと疑う。彼は走り出すと「日本からですか」と聞いてきた。15分位でアンの街に入ってきた。9時過ぎまだコンビニは開いている。通りも店中も人影はチラホラである。軒を連ねた商店街を通り、城壁のある三叉路を左に折れた。坂道を登るとすぐにB&Bが見えてきた。料金は7ポンド20ペニ−で8ポンドを渡した。彼は少ないチップなのに「ありがとう」と言って戻って行った。ドア−を開け中に入るとアン夫人が奥から出てきた。彼女は「街はどうでしたか」とニコッと尋ねた。「オコンネル通りからショッピングセンタ−まで歩きました。静かないい街です」、「それは良かった」と笑い顔の素敵な婦人だ。
「あすの朝食は何時がいいですか」。「朝食は、9時にお願いします」と言って、早々に部屋に戻った。話たい事があったのだが、彼女は主婦と女将の両方を一人でこなしている身だから、貴重な時間帯であろう。部屋から外を見ると、道路の向こう側のブリックの家にも明かりが灯っている。街灯が歩道をぼんやり照らしている。人影もなく時々車が通るだけだ。 テレビがないので先ずシャワ−を浴びることにした。部屋の豪華さやテレビなどの設備は「値段」による。浴室には石鹸はあるがシャンプ−はない。「ふろ」から出てきて喉が乾いたが、冷蔵庫もないので飲み物がない。明日はコンビニで買ってくる事にした。明日はオコオンネル通りの百貨店で皮ジャンを見て、アングレシイズ通りのアンティク−の店からトリニテ−に行こう。ラジオを聞きながら眠った。
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