朝のケネディーパークNEXT ダブリンのタクシー  
     
 国道に出ると時々車とすれ違う。ダッシュボ−ドの時計は7時だった。人家の明かりが点々と見えてきた。彼は「すぐそこだよ」と言いながら小さい道に入っていった。「小さい村」のようで前方の「ため池」の水面がキラキラと光っている。彼はスピ−ドを落とし「ここが‘牡蛎’だよ」と言った。駐車場は広くて明るい。既に数台の車が駐車している。彼は「入るよ」と先陣を切った。1階は「4人〜6人用」のテ−ブルが8卓程ありほぼ満席で賑わっている。壁や天井から黄白色のスポットライトが照らされていてる。雰囲気満点でカップルなら最高だ。ボ−イがメニュ−を持って来た。「ここは牡蛎で有名なんだが今は季節外れでないんだ。ステ−キはどうですか」と聞いてくれた。「肉以外でポピュラ−な食べ物は」と僕、「それならタラバの蟹サンドイッチ、シェパ−ドパイにしよう」と提案してくれた。彼にアイルランド国産のビ−ルを注文してくれるよう頼んだ。

 お客は中年の人達がほとんどで店員は若い。彼の横顔を見ながら「別れの言葉」を考えていた。『蛍の光』の始め部分を少し歌ってみた。「この歌はアイルランド民謡ですよね。小学校の時に習ったんです」と言うと、「いや、その歌はスコットランド民謡です」と彼。「そうでしたか、この歌は別れの歌なんですか」と聞くと、彼は穏やかに「別れではなく出会いの歌なんです。出会いがあるから別れがあるんだ」と言った。「スコットランドは私たち同様ケルト系住民の国なんですよ」と彼。「僕達日本人は古い昔からあなたの国(ケルト)と関係があったんですね」と言うと、彼は「日本人からそんな歌を聞けるなんて考えてもみなかったよ」とちょっぴり嬉しそうだった。奥の小さい部屋に8人用のテ−ブルがあり白いテーブルクロスが掛けられている。真ん中に一輪ざしの花瓶が置れている予約席だろうか。その天井には、大きなシャンデリアが「きらきら」と輝いている。まだ空席のままである。


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